現代都市の街路樹の起源は何処にあるのでしょうか。日本にも古くから並木の文化はありますが、街路樹として都会に取り入れられたのは明治以後でしょう。
その初期の原型が新宿御苑の中に残っているのをご存じでしょうか。細長い広場を挟んで4列のプラタナスの並木が並んでいます。このモデルとなったのがフランスのパリのサンジェリゼ通りの並木だと言われています。更にこの並木の源になったのがイタリア式庭園だと言うのだから驚きです。
街路樹は日除けの回廊
パリの市街地はナポレオン三世の時代に美しいイタリア式庭園をモデルに庭園都市として大規模に改修されたと言われています。イタリア式庭園は修道院の中庭から始まっており、回廊付きの建物に取り囲まれた四角い庭で、その周辺にそって並木が巡らされている例が多く見られます。いわばこれが樹木による日除けの回廊になっているのです。
ここまで話すと街路樹は緑の回廊としてのイタリア式庭園の形式と、日除けとしての機能を併せ持って不可分の物としてあるのがわかります。これこそが都市の街路樹の原型ではないでしょうか。
私が以前、パリで夏の陽射しの強い日にルーブル美術館からサンジェリゼ通りまでを歩いた時にプラタナスの並木が日除けとして涼しさを提供しているのを数多く見かけました。プラタナスの並木の下には涼しそうなカフェが広がり、公園では椅子やベンチがいくつも並べられて人々が気持ち良さそうに佇み、お茶を飲み、時には微笑んでいる風景を見かけました。
街路樹の意味と機能を考える
日本の都市に取り入れられた街路樹は強く刈り込まれ、夏の暑い時期でも、あまり葉を付けていないものを見かけますが、ここいらで一度、原点に帰って、本来の意味と機能を考えてみるのはどうでしょうか。更にこれから、日本の都市の緑の在り方も考えたいものです。